おはようございます。昨日は春分の日だというのに大雪のところもあったようで、桜の勢いも少しそがれた感じでしょうか。でも、あちこちで開花宣言もされ始めましたので、あと少しというところですね。
さて、前回、NPOの組織運営及び資金調達上の課題として、CSVを行う企業とNPOとの協働における課題解決の方向性を示しました。今回は、いよいよこのシリーズの最後に専門家として求められる役割を考えたいと思います。
1.企業とNPO法人の協働に一番大事なこととは
さて、あらためて企業とNPOとの協働に重要なことは何でしょうか。私が思うに、企業とNPOが地域や社会の課題を解決することにコミットし、それぞれが貢献する自らの立ち位置やあり方を再構築することだと考えています。すなわち、各法人の理念や使命(ビジョン・ミッション)から来る地域貢献や社会貢献であることを再認識することです。
その再認識のもと、各法人が持続可能な運営を行うために、本業を通じて多様な関係者との関係を構築し、賛同を得られる手法の一つとしてCSVを行い、その中で企業とNPOの協働が行われるのです。
これが単に各法人の成長や持続可能な運営だけを優先すると、それ自体が目的となり、その目的達成に必要なことしか行われなくなるため、地域貢献や社会貢献という大義名分から外れた底の浅い活動しかできず、長続きしないリスクが生じます。
そうではなく、企業とNPOとの協働を成功させるためには、両者の間で目指すべき社会的価値について、地域貢献や社会貢献という上位概念が一致していることが必要であり、共通の目標を追求するイコールパートナーという意識が重要だと考えます。
2.公認会計士に求められる役割とは
では、企業とNPOとの協働の際に専門家としての公認会計士に求められる役割とは何でしょうか。公認会計士は、その専門性において地域貢献や社会貢献が求められている職業専門家です。会計監査を通じて民間企業の社会的信頼性を付与するものから、地域の各種の委員の就任による専門家としての知見を述べるなど、その活動範囲はかなり広いものがあります。
その地域貢献や社会貢献の一つとして、企業とNPOの協働による『価値の共創』(CSV)に関わる可能性があります。たとえば、企業側からのCSVのアプローチにおいて、企業の経営戦略の指導助言を行う可能性があります。特に、企業がCRMの手法を導入するには、信頼性の強化を行うNPOとの関係構築が重要となります。そこにNPOのことを熟知している公認会計士であれば、企業の本業に親和性のあるNPOとどのように組めばよいか助言できます。
NPO側からのCSVのアプローチにおいては、認定NPO法人や資金調達に係る支援、経営戦略の策定支援などが可能です。この辺は、もともと公認会計士の得意分野ですので、NPOの個別事情を勘案する必要はありますが、比較的アプローチが容易と考えます。特に、CRMの手法を導入するには、企業との関係構築が重要となり、そうした点からも助言することが可能です。
3.1人でも多くの職業専門家が企業とNPOの協働に関わるには
以上は、公認会計士の視点から企業とNPOとの協働の際に専門家として求められる役割を示しました。でも、職業専門家は弁護士や行政書士など公認会計士以外にもたくさんいます。それぞれの専門性を発揮できる部分は当然にたくさんあります。よって、それぞれの得意分野で企業とNPOとの協働に貢献すればよいのです。
ただ、その際に留意すべきことがあります。このような目的で職業専門家がNPOの支援に携わる場合には、まずNPOの信頼を得る必要があります。つまり、企業やNPOにアドバイスを行う以前にNPOが活動する地域や取組状況などを知り、企業やNPOと同じ土俵で議論ができる関係を構築することが必要です。
やはり、職業専門家は信頼関係の中で、初めてその専門性を発揮できるとあらためて思います。そして、企業側及びNPO側からのCSVのアプローチにおいて、1人でも多くの職業専門家が双方の立場の違いを踏まえた協働に関わっていただきたいと思います。
私の立ち位置で言えば、企業とNPOの双方がwin-winの関係を長く継続させることが持続可能な運営と成長を促すものであり、そこに公認会計士が触媒として関わることができれば、社会貢献に繋がるものと考えています。