NPO法人の決算書の見方と経営の視点7

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NPO法人の決算書の見方と経営の視点7

 おはようございます。学校的には今日から夏休みですね。これから少しは電車に学生の姿が少なくなりそうです。昨日は、たまたま4本のアポが入っており、少ししゃべりすぎました。先週、夏風邪がようやく治ったのですが、朝起きるとまた、喉が痛くなっています。用心しないと。

 さて、昨日はあるセミナーで偶然、大学の後輩と会いました。大学卒業して以来ですから、もう30年を超えています。学生時代の面影は当然に残っているのですが、話を少し聞くとずいぶん大学の時のイメージと異なるものがありました。お互い、年を取ったということでしょうか(笑)。今日も元気で張り切って行きましょう。

(要旨)
①NPO法人は本業の他にその他の事業をすることがある
②その他の事業である収益事業の税務上の区分は複雑
③特定非営利活動とその他の事業のバランスを考える

 さて、本日のテーマは「NPO法人の決算書の見方と経営の視点7」です。前回、NPO法人の決算書において、無償または著しく低廉な価格で財・サービスの提供を受けた場合の会計処理と表示をお伝えしました。今回は、特定非営利活動に係る事業とその他の事業の区分です。

①NPO法人は本業の他にその他の事業をすることがある

 NPO法人は本業である特定非営利活動をする法人ですが、その本業をするには当然にお金がかかります。この財源として、その他の事業、すなわち、収益事業をすることができます(NPO法第5条1項)。

 その場合、活動計算書において、特定非営利活動の事業の会計から区分し、特別の会計として経理しなければなりません(NPO法第5条2項)。そのため、法人が、その他の事業を行っている場合には、その他の事業の会計を特定非営利活動の事業の会計と区分して表示することになります。

 実際に、その他の事業を行っていなければ、特に区分する必要はありません。活動計算書の脚注に、「今年度はその他の事業を実施していません」と記載すれば足ります。

 その他の事業で獲得した利益は、特定非営利活動の事業の会計に全額繰入しますので、常にその年度の最終の損益はゼロになります。これにより、特定非営利活動の事業の会計は赤字であっても、その他の事業で獲得した利益を繰入した結果、トータルではその赤字を相殺して黒字にすることになります。

②その他の事業である収益事業の税務上の区分は複雑

 その他の事業である収益事業の税務上の区分は法人税法によります。いわゆる収益事業の34事業に該当するかどうかが問題になります。もちろん、その他の事業でも収益事業に該当しないものがありますので、この線引きは税務上、とても重要です。

 NPO法人の特定非営利活動は非常に範囲が広く、通常、非営利のはずですが、それ自体が収益事業に該当するものもあります。この辺は、収益事業である34事業に該当するかどうかの実態判断になりますので、業際の部分を含めて微妙な問題も多いです。

 たとえば、福祉事業をしているNPO法人が、隣地に駐車場を貸しているとします。その駐車場が不特定多数の利用者に使われている実態があれば、収益事業に該当しますが、これが福祉サービスを受ける方の専用の駐車場としたら、しかも、採算度外視で利用料金をほとんど取っていないとしたら、それは収益事業に該当しないという判断をすることがあります。

 このように、実際の取り扱いはかなり、個別の事情に照らして収益事業に該当するかどうかを慎重に判断しなければならないため、専門家の助言を受けることをお勧めします。

③特定非営利活動とその他の事業のバランスを考える

 NPO法人の本業は、特定非営利活動です。その他事業は本業を支えるために行う活動ですので、その位置関係が逆転しては意味がありません。あくまで、主たる事業が特定非営利活動であるべきです。

 この基本をしっかり押さえないと、何のためにNPO法人の事業をやっているかわからなくなります。そのことが特定非営利活動とその他事業の活動計算書における区分で把握することができます。

 この辺は、悩むところです。本来であれば、特定非営利活動でも利益が出れば、あえてその他事業をしなくても済むはずです。特定非営利活動が収益事業に該当する場合もありますので、一概には言えませんが、いかにNPO法人の事業継続の原資を稼ぐかにかかってきます。

 その中で、特定非営利活動とその他の事業のバランスを考えるしかありません。その法人の特定非営利活動としての事業内容を検討し、その事業でやっていけるのかそうでないのか、その他の事業を実施する必要があるのかないのか、経営者に突き付けられている課題だと思います。